大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岡山地方裁判所津山支部 平成6年(ワ)80号 判決

反訴原告

吉田邦政

反訴被告

小林誠

主文

一  反訴被告は反訴原告に対し、金一八三万二七一一円及びこれに対する平成五年一二月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を反訴被告の負担とし、その余を反訴原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

反訴被告は反訴原告に対し、金三二五万八〇七〇円及びこれに対する平成五年一二月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、本件交通事故により物件損害を被つたと主張する反訴原告が反訴被告に対し、民法七〇九条に基づき損害賠償を請求した事案である。

二  争いのない事実

1  本件交通事故(以下、「本件事故」という。)の発生

(一) 日時 平成五年一二月二九日午前〇時五〇分ころ

(二) 場所 津山市二宮二一九一番地の三先国道上

(三) 加害車両 反訴被告運転の普通乗用自動車

(四) 被害車両 反訴原告運転の普通乗用自動車

(五) 事故態様 交差点において出会い頭に衝突したもの

2  反訴被告は、交差点内に信号を無視して進入し、本件事故を発生させたもので、過失責任を負う。

3  反訴原告は、反訴被告より、本件事故の損害の填補として、被害車両の修理代として金三一〇万円、代車料として金六一万八〇〇〇円の合計金三七一万八〇〇〇円の支払を受けた。

三  争点

本件事故により反訴原告が被つた損害がいくらと認められるか。

1  反訴原告の主張

(一) 被害車両の修理代 金三三九万二八〇九円

(二) 被害車両の評価損 金二五〇万円

(三) 代車料 金六一万八〇〇〇円

(四) 代車用タイヤ代 金六万五二六一円

(五) 弁護士費用 金四〇万円

2  反訴被告の主張

(一) 被害車両の修理代については、以下の理由からして、金三一〇万円が相当である。

〈1〉 全塗装については、損傷部塗装で十分な原状回復ができるため認められない。

〈2〉 エンジンオイル漏れについては、本件事故との因果関係が考えにくい。

(二) 被害車両の評価損については、最大に見積もつても修理代の三割を越えないというべきである。

(三) 代車料については、その総額は金一二三万六〇〇〇円であり、うち金六一万八〇〇〇円分について、本件事故との因果関係を認める。

(四) 代車用タイヤ代については、これを認める。

(五) 弁護士費用については争う。

第三争点に対する判断

一  証拠によれば、以下の事実を認めることができる。

1  被害車両は、平成二年九月に初年度登録されたポルシエであつて、反訴原告が買い受けた金額は車両本体価格で約一一六五万円であつた(乙1、証人山本重雄)。

2  被害車両は、本件事故により約一一時の方向から入力を受け、左前部及び側面が変形し、その衝撃は、フロントエンドプレート、左右ホイールハウジングプレート、フロントサイドメンバー、スペアーホイールウナール、フロントフロアー、ダツシユボード、フロントクロスパネル、左右フロントピラーに波及し、フロントコンストラクシヨンは右側に大きく振れが生じた上、コンデンサ回りは直撃され損傷し、左フロントタイヤ&ホイールに受けた衝撃によりフロントサスペンシヨンが一部損傷するとともに、左右フロントデイスクホイールは突かれ及び圧縮により損傷し、振れがあつた(乙1、証人西根真一)。

3  被害車両は、本件事故当日、昭和車両に搬入され、翌年早々、上森鈑金に運ばれて修理され、平成六年四月ころ、修理を終えたが、そのころになつて、被害車両後部にある上下に分かれているエンジンの上の部分に滲みがあるのが発見され、パツキンの取り替え修理がなされた。

右修理費の総額は金三三九万二八〇九円であつたところ、右取り替え修理費は金五万八九一六円であつた(甲1、乙1、証人髙橋卓彦)。

4  被害車両の本件事故前の中古車としての平均的販売価格は金六五〇万円であり、同平均的下取り価格は金四五〇万円、同平均的卸売価格は金五〇〇万円であつた(乙2、証人西根真一)。

二  被害車両の修理代について

1  まず、全塗装の点について検討するに、右一の1及び2の各事実を総合すると、被害車両は高額な外国製の車であり、初年度登録から本件事故まで三年余りを経過していたこと、被害車両は本件事故により前部を中心として大きな損傷を受けたことが認められ、これらの事実に照らすと、部分塗装によつて事故による修理がなされたことが分からないように完全に復元することは困難であり、反訴原告は反訴被告に対し、本件事故による損害として全塗装に要した費用を請求できるというべきである。

2  次に、エンジンオイル漏れの点について検討するに、右一の1ないし3の各事実を総合すると、被害車両は初年度登録から本件事故まで三年余りを経過していたこと、被害車両は本件事故により左前部から入力を受けたが、被害車両においてはエンジンが後部に設置されていたこと、エンジンオイル漏れが発見されたのは、本件事故後三か月余りを経過してからであつたこと、エンジンオイル漏れの原因はパツキンにあつたことが認められ、これらの事実に照らすと、本件事故によりエンジンオイル漏れが発生したものとまで認定することはできないというべきである。

3  以上によれば、反訴原告が反訴被告に対して、被害車両の修理代として請求できるのは、修理費総額金三三九万二八〇九円からエンジンオイル漏れに要した修理費である金五万八九一六円を控除した金三三三万三八九三円となる。

三  被害車両の評価損について

この点について、反訴原告は、被害車両については、本件事故前に金七五〇万円で売買する約束ができていた旨主張し、これに沿う証拠(甲2、証人山本重雄)もあるが、前記一の4で認定した事実に照らすと、被害車両の希少性を考慮しても、平均的な価格との差が非常に大きく、これらを直ちに採用することはできないというべきである。

前記一及び二で認定した各事実に照らすと、本件の場合においては、二で認定した修理代を基準として考えるのが相当であり、被害車両の損傷の大きさ及びその市場性等からすると、被害車両の評価損については、二で認定した修理代の四〇パーセントと認めるのが相当であり、そうすると、金一三三万三五五七円となる。

四  代車料について

代車料のうち、金六一万八〇〇〇円を本件事故による損害とすることについては、、当事者間で争いがない。

なお、反訴被告は、本件事故による修理相当期間は二か月である旨主張するが、前記一の1及び2で認定した事実並びに前記二の1で認定した事実によれば、本件において被害車両の修理に実際に要した期間は三か月余りであり、これが不当に長いとはいえないというべきである。

五  代車用タイヤ代金六万五二六一円を本件事故による損害とすることについては、当事者間で争いがない。

六  以上によれば、反訴原告が反訴被告に対して請求できる損害は合計金五三五万〇七一一円となるところ、前記第二の二の3で述べたとおり、反訴被告は損害の填補として金三七一万八〇〇〇円を支払つているので、これを控除すると金一六三万二七一一円となる。そして、本件事案の内容、認容額等本件訴訟に現れた事情を考慮すると、反訴原告が反訴被告に対して請求できる弁護士費用は金二〇万円と認めるのが相当である。

そうすると、本件において、反訴原告が反訴被告に対して請求できる金額は合計金一八三万二七一一円となる。

(裁判官 横溝邦彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例